ジョージ・シアリングとメル・トーメ、1983年の録音で「An Evening With Georege Shearing And Mel Torme」が陽とすると、こちらは陰。シックで落ち着いた雰囲気で何とも癒される。この二人を聴いていて、いつも思うことがある。それは、この二人には品格があるということ。こればかりは練習すればすぐ身に付くものではない。このアルバムを上質と言わんとして何と呼べよう。

この二人の最高のアルバムです。ｼｱﾘﾝｸﾞの名曲「ﾊﾞｰﾄﾞﾗﾝﾄﾞの子守唄」もいいですが、特に「ﾊﾞｰｸﾘｰｽｸｳｪｱのﾅｲﾁﾝｹﾞｰﾙ」とそれ以上にすごいのが「春の如く」ですね。この曲は今までいろいろな歌手が歌っていますが、ｼｱﾘﾝｸﾞのﾋﾟｱﾉｱﾚﾝｼﾞと共に恐らくこの曲の一番でしょうね。感動で思わず拍手してしまいます。

たしかその年のグラミー（ジャズボーカル）受賞アルバムでしたよね？　それもそのはずの完成度で、この円熟、この音楽的豊穣、若いころのメルトーメにあった独特の癖のようなものが苦手でしたが、もう別天地です。�@のノスタルジックな選曲も粋ですが、ハロルドアーレンの�D、シアリングのオリジナルの�E、そしてメドレーの�Fと、間合いの一つひとつまで、「こう歳を取れたらいいな」と痛感させてくれます。イギリスの歌曲の�Gは、まるでプロテスタント教会の聖なる響きに、自然と導入され、�Hで天使が舞い降ります。

久しぶりに聴きましたが彼らのコンビはやっぱりいいですね。