その頃、ハリウッドに小さなコーヒーショップ「the We Ours」をオープンさせる。メイシーにとっては、深夜スタジオを出て、みんなで気軽に楽しむ店がほしいという理由から、「なら自分ではじめちゃえっ!」と店を開き、大袈裟なことは当初全く考えなかった。しかし、「the We Ours」は思いがけなく大きくなっていく。メイシー曰く、「そう、口コミでどんどん広がってね。ルーツとかトリッキーとかも来るようになって溜まり場みたいになっていったのよ」。ここには誰もが歌い手になれるようマイクをおいて、メイシー自身や現地のライヴバンド、DJなどもここで集まってはライヴを開き、ちょっとした話題のスポットになっていった。メイシーの友達がさらに友達を呼んで、その輪がどんどん広がっていった。メイシーもここでパフォーマンスの腕を磨いたという。
そして1999年、メイシー・グレイは評論家の間でも絶賛されたデビュー・アルバム「On How Life Is」で、一躍シーンに舞い降りた。のちに彼女は世界で750万枚以上のセールスを記録し、グラミー賞受賞者としてその名を博すことになるのだが、「On How Life Is」の成功は遅咲きなものであった。
そして2003年、
約2年ぶりとなるサード・アルバム
「Trouble With Being Myself」をリリースする。今回初顔合わせとなる大物プロデューサー、ダラス・オースティン(TLC、モニカなど)やベックを迎えた今作は、前作で全面に押し出したロック色はやや抑え目に、彼女のバックボーンにある70sソウルやファンクといったブラック・ミュージックへの回帰が見られた素晴らしい作品となった。ファッション界やハリウッド・デビューと幅広い活動をしているメイシーだが、まだまだ音楽シーンのトップ・アーティストとして君臨し続けなければいけないようだ。