発売は相前後するが、『Shades』でレギュラー・カルテットを解散したキースは、ソロ活動と共に新しいカルテットを、2歳年下の北欧ノルウェイの若き獅子、ヤン・ガルバレクを迎えて結成、一方、75年に入るとキース・ブームを巻き起こし、『Return To Forever』と共にECMレーベルの基礎を固めた、LP2枚組のソロ・アリバム、『Koln Concert』を録音する。当時までの常識からいって、LP2枚組のソロ・ピアノなど考えられない時代だったが、この作品は爆発的なヒットを記録する。
この作品以降、スタンダード曲を、ある意味でヨーロッパ的な感性を含む表現で演奏した作品が、ヨーロッパから輩出する。空間を意識したホールトーンを基本とする録音方法と、スタンダード曲のクラシカルな解釈によって、キース・ジャレットは、意識しなったにもかかわらず、ウイントン・マリサリスの登場によって「ジャズの伝統」への回帰を意識していた当時のアメリカにおける「ネオ・クラシカリズム」に対応した形で人気を博していく。 1990年代中盤過ぎ、精神的なプレッシャーから、立ち止まったキースだが、『Melody At Night With You』で見事復活、さらに2000年にはパリでのスタンダード・トリオによるライブ盤『Whisper Not』を発表する。