ヘルダーリンのこの１stを聴くと、ジャケットさながら北ドイツあたりの冬の薄暗い森の情景が浮かんでくる。この尋常でない抒情性と浮遊感は、英国や北欧とも少し肌合いが違う、きわめてドイツ的なロマンティシズムからしか生まれないものだろう。特に作品全体に漂う独特の雰囲気は今の時代では絶対作れない。ジャーマンプログレでは外せない傑作。

3rdアルバム。エレピやアコースティック弦楽器を、プログレ風アレンジにのせたいわゆるシンフォプログレ。４〜５曲目のトランシーな展開は、クラウトロックの面目躍如です。「ＲＯＶＯみたい」とかアクロバティックな言い方もされていた位の名曲です。ＡＯＲ風とも言われます。ドイツの田舎パワーが活き活きしてるのが現在でもわかります。ヘルダーリンは1stの後もしばらく、相当のクオリティを持っていたのがわかります。

ROVOっぽいというぶっ飛んだ感想をどこかで見てからずっと気になってました。確かにキラキラとしたシンセを使ったトランシーな反復が出てくる所はそれっぽいです。ともかく、彼らは1st以降も集中力のこもった作品を作っていたことが分かりました。どドイツな詩情と田舎臭さ素朴さは溜まらないものがあります。この再発を期に買うべき。かも。

基本はﾄﾗｯﾄﾞだと思えるが…。しかし、我が人生の中で聴いてきたﾄﾗｯﾄﾞの中でも特筆すべきものがある。ひかえめな印象の作風なわりにﾎﾟｯﾌﾟでｷｬｯﾁｰ(ﾄﾗｯﾄﾞ風だから)。弦楽器のｱﾙﾍﾟｼﾞｵを背景としたﾅﾆｰの歌声に深い幻想へとつき落とされるだろう。同じ再発のｴﾑﾃｨﾃﾞｨよりも好き。捨て曲なしよ。