あまりにも粒を均質に揃えずぎるため、ピアノとは異なる楽器のようにも聴こえるため好き嫌いは出るだろうが、音の濁りを排除するために行う多彩な処理が実にうまい。私はＢＭＧとＯＮＤＩＮＥの両方を買ってきて、それぞれの曲集を曲順で編集し直して聴いています。するとこの録音の曲順を成立させるための解釈をより明確に聴き取ることができ、これは相当に面白い。最近多い響きが甘い意識の低い録音より数段こちらのほうが良い。聴かせる行為にここまで意識的な録音も少ない（多少強引だけど）。ムストネンならこれが一押しかな。

音楽史上最強最高の５度使いはバッハとフレコバスティだろう。バッハは平均律の５度配置を一度は考えたのではないだろうか（推測）？この方法で数曲弾くと、驚くような効果が上がるが、これで曲集を通して弾くと様式を超える厳しさが出てしまう。ショスタコは良い意味で緩衝作用を発揮しており、双方の新しい視点を掘り出すことに成功している。１曲単位で考えた場合、技術的にも現在最高の演奏に間違いない。それにしても様々な問題が浮き彫りになっており、平均律に正面から取り組んでいる人なら避けて通れない録音だろう。本物の仕事だ。