Polyvinylからリリースされたデビューシングルのとてつもないクオリティを考えると、American Footballのファースト・アルバムが素晴らしい作品であろうことは疑いの余地も無かった。

デビューシングル”The One with the Tambourine”でMike Kinsellaは自らのエモ的ルーツを遥かに超え、Cap’n JazzよりもRed House Paintersに近い美しい音世界を披露した。このバンド名が冠されたファーストアルバムはそのようなレベルに完璧には達しないまでも、遜色の無いクオリティを擁している。

このデビューアルバムでMike Kinsellaは、実兄のTim KinsellaがJoan of Arcで繰り広げる（あえて言うなら）ポスト・エモらしい鮮やかなアルペジオ満載のサウンドをJoan of Arcほど複雑ではない形で展開している。

Polyvinylリリースのシングルと異なり、このアルバムでは数曲でホーンセクションやウーリーが深い味わいを醸し出している。おなじみの疾走感溢れる楽曲（”Honestly?”）も相変わらず楽しめるが、やはりKinsellaの真骨頂は流れるようなメロディの浮遊感にあるようだ。”American Football”ではその真骨頂が非常に魅力的な形で前面に出ている。