NHK「現代の音楽」アーカイブシリーズ/黛敏郎
ある時は、あの壮大かつ実験的な音楽『涅槃交響曲』の作者として、またある時は「題名のない音楽会」の司会者として、他、様々な才能を発揮した黛敏郎。おのおのの聴き手の年齢によっても、頭に浮かぶ姿が微妙に違うのではないでしょうか。そんな黛の作品、映画音楽から吹奏楽、電子音楽まで本当に幅広いジャンルに渡っていますが、ここに選ばれた4つの作品で、それらを万遍なく体現できることでしょう。
極めて考え抜かれた十二音音列による厳格な音を放つのは、予想もつかないような楽器群であり、電気的な音と、アコースティックな音が交錯する不可解な世界は、まさに小宇宙そのものです。『オーケストラのための呪』は、まさに映画音楽そのもの。『プリペアド・ピアノと弦楽のための小品』は詩的な感情こそあれど、音としてはとてもシリアスなもの。そして『カンパノロジー』は、後の『涅槃交響曲』を予感させる、梵鐘の音を使った気も遠くなるような音響、録音技術(ミュージック・コンクレート)への挑戦です。
今作では、日本の電子音楽批評&演奏家としても第一人者である川崎弘二氏に解説を執筆を依頼。曲に対する詳細なアナリーゼを含めた資料価値のみならず、大変興味深い一つの読み物としても成立する素晴らしい解説です。(NAXOS JAPAN)
【収録情報】
黛敏郎
1. 七人の奏者によるミクロコスモス (1957)(初演)
北村維章(クラヴィオリン)、伊部晴美(エレクトリック・ギター)
小野顕(ミュージカル・ソー)、外山雄三(ピアノ)
小宅勇輔、小林美隆、近衛秀健(打楽器)
岩城宏之(指揮)
録音時期:1957年3月28日
録音場所:第一生命ホール
録音方式:モノラル
放送日:1957年4月7日
2. 作品を語る
鼎談: 諸井誠、矢代秋雄、森正
談話: 黛敏郎
3. オーケストラのための『呪』(1967)(初演)
NHK交響楽団
森正(指揮)
録音時期:1967年11月29日
録音場所:東京文化会館
録音方式:ステレオ
4. プリペアド・ピアノと弦楽のための小品 (1957)
坂本玉明、竹内智子(ヴァイオリン)
奥邦夫(ヴィオラ)、藤本英雄(チェロ)、本庄玲子(ピアノ)
岩城宏之(指揮)
録音時期:1957年10月24日
録音場所:第一生命ホール
録音方式:モノラル
5. ミュージック・コンクレートによる『カンパノロジー』(1959)(放送初演)
NHK電子音楽スタジオ
録音方式:モノラル
放送日:1959年11月29日
仕様:HQCD (Hi Quality CD)
解説:川崎弘二
【NHK「現代の音楽」アーカイブシリーズ】
NHKの協力のもと、戦後の日本現代音楽の時代の空気が当時の演奏で甦る!
「NHK「現代の音楽」アーカイブシリーズ」は、戦後の日本音楽シーンを代表する邦人作曲家に焦点をあてたCDシリーズです。収録音源は全て、NHKラジオ番組「現代の音楽」で過去放送された番組のマスターテープから編集・リマスタリングを行い、マスターの再現性においてきわめて評価の高いHQCD(Hi Quality CD)でリリースします。NHKの協力の元、希少価値の極めて高い録音のアーカイブ化を実現しました。代表作の初演や未発売作品のライヴ録音を中心に収録。日本人の創りだした音楽が、作曲当時の時代の空気とともに今ここに甦ります。
【NHKラジオ番組「現代の音楽」について】
戦後間もない1947年のラジオ番組「日本の音楽」などを前身として、1957年より日本の現代音楽の有り様を今日まで伝えている番組。現在の放送時間は、毎週日曜18:00-18:50。柴田南雄、上浪渡、白石美雪、西村朗などが歴代の解説を務め、2009年からは猿谷紀郎が担当。邦人作曲家から海外の著名な作曲家まで、音楽祭や作曲賞本選会などのライヴ録音を中心に放送。(NAXOS JAPAN)
NHKのラジオ番組『現代の音楽』の過去の遺産が続々CD化され始めた。NAXOSの快挙である。本作は黛の1950年代の作品。すでに日本回帰が始まっているが、まだ日本音楽の特徴を素材として扱いさまざまな実験をしているころだが完成度が高い。演奏もなかなか素晴らしく、音も予想以上に良い。★(T)(CDジャーナル データベースより)