文句の付けようがないラブコメ ダッシュエックス文庫

鈴木大輔

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784086310048
ISBN 10 : 408631004X
フォーマット
出版社
発行年月
2014年11月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
253p;15

内容詳細

圧倒的大反響!ラノベ史上もっとも”泣ける”不条理ラブコメ。

どこまでも純粋で歪な愛の喜劇は、神とその生贄として捧げられた少年の出会いから始まる――。

ここからは物語の冒頭を一部公開!!



「初めまして。わたしが神だ」


 葉巻をくゆらせながらその少女は言った。
 膝に乗せた本へ視線を落としたまま。桐島ユウキには目もくれずに。
「名を神鳴沢セカイという」
 くちびるから紫煙を吐き、少女は本のページをめくる。
「知ってのとおり、今日から貴殿はわたしのものだ」
 美しい少女だった。
 それも現実離れして美しい。
 銀色の髪に赤い瞳。纏っているのは超然たる空気。
 これが桐島ユウキの”神”。
 世界でただひとり、千年にもわたって世界を救い続けているという人外の存在。
桐島ユウキがこれから生け贄として捧げられる相手。
「気に入らなければ逃亡を図るもよし。いっそ自ら命を絶つのもいいだろう」
 少女は冷笑して、
「ただしいずれの場合も、貴殿の一族郎党、九族にまで累が及ぶことを忘れぬよう。”捧げ物”としての役割は、九十九機関によって選ばれた貴殿にしか務められぬのだから」
 びゅう、と風が窓を叩いた。
 例年より早い初雪が東京の空を舞っている。灰色の空から絶え間なく雪が降り落ち、神の住まう屋敷の周囲を冬景色に染めつつある。
「さて本題だ」
 少女が顔を上げた。
 赤く光る瞳がユウキに絡みつく。
「捧げ物となった貴殿には対価が支払われる。金でも女でも権力でも好きなものを望むといい。いかなる願いも叶えてみせよう――ただひとつ、貴殿の自由を除いては」
 頬杖をつき、少女は目を細める。
冷徹で、心の奥底まで見透かすような。そんな視線。
「……そんじゃ」
ユウキが初めて口を開いた。
 少女の柳眉が「ほう?」とでも言いたげに動く。
 十代半ばとみえる少年の、ややトーンの高い声はしかし、舞台俳優のそれのように朗々と響いた。人の寿命をはるかに超えて生きる存在を前にして臆した様子もない。
「さっそくだけど望みを言っていいか?」
「無論」
 わずかながら少女が身を乗り出す。 
 興がそそられた――そんな仕草にみえる。
「なんなりと言うがいい。なんなりと叶えてみせるゆえ」
「んでは」
 コホンと咳払い。
 あーあーあー、と喉の調子を整えて。
 服の袖を払う仕草をし、襟元をきゅっと正してから。


「神鳴沢セカイさん。俺と結婚してください」

と言った。
「…………」
 少女の時間が止まった。
 ぽかんと口を開け、瞬きもせず目を丸くしている。呼吸すら忘れたように。
 一方のユウキは表情を変えない。こちらも瞬きせず、しかし呼吸は乱れず規則正しく
ただじっと返事を待っている。
 暖炉の薪がぱちんと爆ぜる。
 葉巻の先からぽろりと灰が落ちる。
 窓の外の風雪がガラス戸をかたかた鳴らす。
「は」
 どれほどの時間が経ったか。
 やがて少女は視線を膝元に落とし、両手をぎゅっと握り、頬を染めて。


「はい。よろしくお願いします」

 と言った。

  †


 ――さあ。
 ラブコメを始めよう。
 彼と彼女の、誰も文句のつけようがない愛の喜劇を。

本編に続く。

【著者紹介】
鈴木大輔 : 第16回ファンタジア長編小説大賞にて佳作を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • θ(シータ) さん

    「念のために言っておくと、初夜を迎えるというのはつまり、生娘であるわたしを貴殿が初めて女にする儀式であり」"愛の喜劇"と書き"ラブコメ"と読む。前半は淡々とした日常ラブコメで後半から信じられない程の疾走感があり、読み終わった後に絶望感ならぬ寂寥感が心を占めてたね。ラブコメは普通、好きな人と結ばれて大団円なんだけどこれは、ハッピーエンドという名の先が見えない。でも、セカイとユウキの純愛は他の作品に劣らないぐらい尖ってるんだよね。何度でも結ばれ、引き裂かれるふたりはこれからどうなる…星四つ【⭐️⭐️⭐️⭐️】

  • よっち さん

    千年を生きる神・神鳴沢セカイへの生贄として捧げられた高校生・桐島ユウキ。彼が生贄となる代わりの願いを問われ、彼女に結婚を申し込んだところから始まる物語。世間知らずで尊大な神のセカイは、一方で結婚したユウキとどうしたらいいのか、自分なりにいろいろ考えてみたりする一人の女の子で、まだお互い知らないことがたくさんある二人が、距離を縮めようと試行錯誤する姿は見ていて微笑ましかったですね。単巻ものとして完結させなかったことで、どうやって続けるのか、終わらせるのかハードルが上がった気もしますが、今後の展開に期待です。

  • 異世界西郷さん さん

    例によって、『二ノ宮くん』も『おにあい』もアニメでしか観たことがなく、この作者の作品を読むのは今回が初めてです。なんというか、不思議な文章を書く方だなと思いました。系統だってないけど引き込まれるような感じというか。本編については、たしかに「文句の付けようがない」内容でした。ユウキとセカイを中心に繰り広げられるギャグとシリアスの絶妙なバランスは見事でした。とはいえ、まさか巻数を重ねるたびにこの展開が続くのでしょうか。だとしたら、結構な心折設計ですよね。2月に次巻が出るみたいなので次も買います。

  • Yobata さん

    千年を生きる神である神鳴沢セカイの生贄として捧げられた桐島ユウキ。生贄として一つ叶えられる願いとしてユウキはなんとセカイに結婚を申し込む事に。幸せな日常をおくりつつも、神としての秘密が日常を狂わし始め…。神に対してプロポーズして始まるラブコメストーリーに、最初のテンパったり無理するセカイは可愛かったし、名前の呼び合いやお姫さま抱っことユウキとも順調に進んでいったけれど、セカイの神としての職務が明らかになり始めてからはこの恋模様も一変。実はループという繰り返しの手の平の上で進んでいた運命のような恋は→

  • sskitto0504 さん

    題名に惹かれて…ラブコメなんて嘘だった…まあ最初だし、設定面が強く出た感じでしたね…どうにかセカイを…次巻、楽しみです…

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鈴木大輔

第16回ファンタジア長編小説大賞にて佳作を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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