基本情報
内容詳細
原爆から70年。記憶の風化という、新たな悲劇を迎えないために。「原子爆弾の被爆地には、75年間草木も生えぬ」投下直後、アメリカでの実験から2つの都市はこう絶望視された。広島・長崎での被爆直後から治療にあたった医師の記録2篇と、文芸作品として評価の高い2篇を収録している。
目次 : ヒロシマ日記―地上最悪の日/焦土の中の病舎/慢性原爆症患者 蜂谷道彦/ 夏の花 原民喜/ 長崎原爆記―被爆医師の証言 八月九日の長崎/医療活動の開始/死の同心円 秋月辰一郎/ 祭りの場 林京子
【著者紹介】
蜂谷道彦 : 1903年、岡山市に生まれる。1929年に岡山医科大学を卒業後、1942年、広島逓信病院院長に就任。1945年8月6日、原子爆弾の投下時、市内の自宅で被爆、三〇近い傷の縫合を受けた。8月11日以降、院内回診を始め、患者の病床録作りを医師に指示。結果、患者の白血球が減少を突き止め、爆心からの距離、被爆位置と白血球数の関係を地図にして発表した。院長としての原爆投下直後の五六日間の記録は「ヒロシマ日記」として世界一八ヵ国で出版。1966年広島逓信病院院長を辞職、1980年4月13日死去
原民喜 : 1905年11月15日、広島市に生まれ、慶應義塾大学英文科卒業。1945年1月、郷里の広島に疎開、8月6日に広島市に原爆が投下され、生家で被爆、一命はとりとめるものの家は倒壊し、原爆投下の惨状をメモした手帳を基に描いた「夏の花」は1948年、第一回水上滝太郎賞を受賞。遠藤周作から、「広島原爆を描いた小説の中でも最高のもの」と絶賛されている。1951年死去
秋月辰一郎 : 1916年1月3日、長崎市に生まれ。京都帝国大学医学部卒業後、長崎医科大学(現・長崎大学医学部)放射線科の永井隆博士のもとで研究。高原病院などを経て1944年、長崎浦上第一病院(現・聖フランシスコ病院)医長、後に病院長。1945年、長崎で被爆後、医療の傍ら被爆者問題に取り組み、被爆体験資料の収集・発掘などに努める。長崎の証言の会代表委員などを歴任。日本医師会最高優功賞、聖シルベステル教皇騎士団勲章、勲四等瑞宝章など。2005年10月20日死去
林京子 : 1930年8月28日、長崎市に生まれる。商社員だった父の勤務地上海から1945年に帰国し、長崎県立長崎高等女学校三年に編入学。同年8月9日、市内大橋にある三菱兵器工場に学徒動員中、被爆した。爆心地に近かったが奇跡的に助かった。長崎医科大学附属厚生女学部専科中退。1963年被爆者手帳を受ける。被爆から三〇年後、体験をモチーフにした短編小説「祭りの場」で1975年(昭和50年)芥川賞を受賞する。女流文学賞、川端康成文学賞、谷崎潤一郎賞、野間文芸賞、2005年度朝日賞などを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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