母子舟/恋して母は

藤圭子の未発売作品を発掘、シングルリリース

発見された音源はDAT（Digital Audio Tape）で音質的には完璧。歌唱も全盛期に近い、豊かな中・低域とダイナミクスが感じられる完成度。録音時期は関係者の話を総合して、1984年頃と推察される。

【収録曲】
1. 母子舟（おやこぶね）
2. 恋して母は
（作詞：石坂まさを / 作曲：平尾昌晃 / 編曲：竜崎孝路）

【発売に際して】
音を聴いての第一印象として何か違和感、何故か拒絶感があったことは事実です。彼女のデビューから引退声明までのRCAでの10年間、プロデューサーとして、苦労も栄光も共にしてきた小生としては、「母」という立場のオリジナル作品は果たして賛同されるか、いささか疑問がありました。
しかしながら、作品の完成度、とりわけ彼女の歌唱の出来ばえはこうした感情を打ち消すのに十分でした。その上、歌というものは、本来、歌手の履歴でもなければ日記でもなく、歌唱者として多様な主人公を演じるものだからと納得しました。
天国にいる彼女に想いを馳せると単純に商売にする気にはなれないのも事実ですが、藤圭子歌手人生の厳然たる履歴の一ページであり、貴重な遺産のひとつであれば、発売すべきであるとの結論に達しました（個人的には「発売」というより「発表」といいたい気持ちですが）。

（音楽プロデューサー/榎本 襄）