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日本作曲家選輯
芥川也寸志:エローラ交響曲、交響三章 他
湯浅卓雄とNZ響による快演!
芥川也寸志の各時期の代表作が、前代未聞の爆発演奏で登場します。
芥川也寸志(1925-1989)は、大河ドラマ「赤穂浪士」の音楽を担当したり、N響アワーの司会者として広く日本人に親しまれた存在でした。
芥川龍之介の三男として東京に生まれた也寸志は、恵まれた文化的環境の中で、幼少時よりストラヴィンスキーなどに親しんで育ちました。橋本國彦や伊福部昭に師事し、橋本のリリシズムと伊福部のダイナミズムを巧みに融合させて自家薬篭中のものとして行きます。
戦後は、社会主義リアリズムへの傾倒も相まって、「日本のショスタコーヴィチ」の異名を取り、明快できびきびとしたリズムが強調された演奏効果抜群の作品を発表し始めます。
この時期の代表作の一つ「交響三章」は、1948年に発表され、愛らしい旋律と執拗なリズムの刻みが印象的な作品です。第一楽章はソナタ形式に近いカプリッチョで、リズムが千変万化して展開する名人芸が聴きものです。第二楽章は、ニンネレッラ(子守歌)とされ、日本的な主題が顔を覗かせます。第三楽章は、冒頭よりトゥッティ6連発で興奮させ、ショスタコーヴィチやプロコフィエフも真っ青の賑やかさです。最後は圧倒的な盛りあがりを見せ、熱狂的な陶酔の中に締めくくられます。
その後、芥川は次第に前衛的な手法に関心を傾け、友人である黛敏郎や武満徹の影響もあり、不協和音の不気味さや無調の不安感に興味を示しだします。
この時期1958年に作曲された「エローラ交響曲」は、黛の「涅槃交響曲」に通じ、混沌とした音響で東洋思想を表現する「交響曲」です。黛が仏教思想を観念的に表現する手法を取ったのとは異なり、エロティックな造形で有名なインドのエローラ石窟のヒンドゥー美術を素材としているだけに、南国的で直截な性表現をそのまま音響にしている過激な作品です。
全体は16の部分に分かれ(このCDでは部分ごとにトラックが分けられています)、各部は「男」と「女」の性格を有し、「女女女女男女女男男女女男男男男女」の順番で演奏され、マリンバなど打楽器はけたたましく打ち鳴らされ、金管楽器は咆哮し、男女が激しく睦み合う様を生々しく描写した、東洋版の「法悦の詩」とも言える挑発的な作品です。
晩年に差し掛かり、芥川は前衛運動と距離を置くようになり、再び明快で分かりやすい音楽を志向するようになります。この時期の代表作「ラプソディ」(1971)は、ゲルギエフも取り上げたことのある名作。
冒頭の印象的なホルンを受けて、第一部は謎めいた雰囲気でゆったりと進行し、突如テンポがアップしてからは、打楽器群の大活躍する野性的で戦闘的な音楽が目くるめくような華麗さで次々と現れ、第一部が再現してクールダウンした後、一層暴力的な音響が再帰し、圧倒的な高揚感の中に頂点を築きます。
以上、演奏はナクソス日本作曲家選輯を支える名職人、湯浅卓雄がニュージーランド交響楽団を指揮したもので(2002年録音)、オケの機敏な俊発力と合奏の優秀さは実に見事。少々悪乗りし過ぎなほど荒れ狂うパーカッションと、強靭で激烈な金管楽器の威力には目をみはります。自然で楽器の定位が明確な録音も特筆もので、管弦楽のヴァイオレントな強奏に酔いしれることのできる、「過激」な音響を楽しめる一枚と言えるでしょう。
■オーケストラのためのラプソディ(1971)(15:03)
■エローラ交響曲(1958) (17:09)
■交響三章(トリニタ・シンフォニカ)(1948)
Capriccio: Allegro (5:07)
Ninnerella: Andante - poco piu mosso - Andante (10:37)
Finale: Allegro assai (5:55)
ニュージーランド交響楽団
指揮: 湯浅卓雄
録音・編集(24bit): 2002年1月 ニュージーランド、ウェリントン、ロワー・ハット・タウン・ホール