鉄道ものがたり

広田尚敬

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784904845462
ISBN 10 : 4904845463
フォーマット
出版社
発行年月
2015年01月
日本
追加情報
:
199p;26

内容詳細

時代とともに列車は走る―鉄道写真の第一人者、広田尚敬は日本の鉄道を60年以上にわたって見つめてきた。躍動感みなぎる列車、駅や車内の詩情あふれる人間物語。蒸気機関車から新幹線まで、時代の移り変わりを捉え続けている。鉄道を舞台に繰り広げられる、人々を惹きつけてやまないシーン、約220点を収載。

目次 : 第1章 永遠の蒸気機関車たち/ 第2章 蒸気機関車を追って(驀進/ 狩勝峠/ 夢幻/ 昭和34年北海道)/ 第3章 僕と鉄道(僕とローカル線/ レールとともに/ 動止/ 我が友4−4−0)/ 第4章 鉄道のくに(国鉄/ 私鉄特急/ 新幹線/ 蒸気機関車再び)

【著者紹介】
広田尚敬 : 1935年東京生まれ。1960年よりフリーランスの写真家として活動。1968年の初個展「蒸気機関車たち」で独自の表現世界を展開して評判となり、鉄道写真の世界を社会にアピール。1988年に設立された日本鉄道写真作家協会の初代会長をつとめるなど、「鉄道写真の神様」として日本の鉄道写真界を牽引してきた。アマチュア時代を含めた鉄道写真歴は半世紀を越え、30年続いているロングセラーのシリーズ『のりものアルバム』(講談社)など、子ども向きの出版物にも力を注いでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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冬の夜。しんしんと音もなく雪が降っている...

投稿日:2021/04/14 (水)

冬の夜。しんしんと音もなく雪が降っている。人の気配はない。ぼうっと見える木々のシルエットは鉄道林だ。そのふもとを一本の線路が通っていて、小さなホームがある。夜明けを待つホーム。そこには電灯がともっていて、あたりをほのかにオレンジ色が照らし、雪が反射する青白い光との間に、淡い境界線を描いている。まるでおとぎ話のような一枚の写真。当写真集の27ページにあるその写真は、1973年12月20日に宗谷線の東六線駅で撮影されたものだ。私はこの写真を見た瞬間、魂を掴まれたような気持になった。幻想的、と表現すればいいだろうか。以来、私はこんな風景と出会うことが、私にとっての「旅」である、と感じ、そんな感動を探すようになった。本写真集は以下の4章構成になっている。第1章「永遠の蒸気機関車たち」 第2章「蒸気機関車を追って (驀進 狩勝峠 夢幻 昭和34年北海道)」 第3章「僕と鉄道 (僕とローカル線 レールとともに 動止 我が友4-4-0)」 第4章「鉄道のくに(国鉄 私鉄特急 新幹線 蒸気機関車再び)」。このうち第2章は広田氏の写真集「昭和三十四年二月北海道」の捕逸編といった体裁。広田氏の写真の美しさは、無類の情緒とロマンが漂う画面構成の力にある。東六線駅の写真も、少し手前に引くと、小さな待合室があることを私は知っているし、知らなくても、ネットで検索すればわかるのだ。けれども、このホームと線路の世界を抽出し、圧倒的な純度を獲得したのは、写真芸術ならではである。広田氏は、鉄道を愛する人が風景から感じる情緒を、写真に定着させる能力を持っているのだ。だから、一枚一枚の写真が、圧倒的な情感をもって、見るものに迫ってくるのである。第1章、1969年に撮影された厚岸-糸魚沢C58。チライカリベツ川の美しい湿原が車窓に展開する私も大好きなところ。そこをC58が走る失われた風景は絶品。室蘭線をすれ違う上り線と下り線のD51。石炭輸送にも力を発揮したD51が、複線区間をダイナミックに行き交う。三笠駅の9600。無煙化の波が押し寄せる中、最後までSLが活躍した幌内線。特に、幼少の私が、父に連れられて見た9600(残念ながら記憶はないのだけれど、写真が残っている)だけに感慨深い。名寄駅のC5550。C55が最後まで活躍した宗谷線。この機の最大の特徴である美しいスポーク動輪を収めた1973年12月の写真。金華-常紋間を走るD51444。私の父も蒸気機関車を撮影するため、石北線の常紋駅、金華駅はよく利用していた。そんな常紋駅は70年代のうちに廃止。残った金華駅も近く廃止になると言う。金華で乗り降りしたことのある私も寂しい。第2章、常磐線、広野-水戸間の蒸気機関車の力強い姿。根室線の旧線、狩勝峠を越える往年の名勝、狩勝-新内間の雄大な景色を行くD51。1965年の写真。熱と煙で、機関士が命がけの仕事をしたところでもある。昭和34年(1959年)の北海道訪問からは、寿都鉄道湯別駅の様子、函館線黒松内駅の馬橇、真谷地、大夕張、美流渡、角田といった石狩炭田を走る炭鉱鉄道、然別山を背景に疾走する北海道柘植鉄道の8622、根室柘植鉄道の銀竜号、厚床を起点としていた馬鉄風連線などいずれも貴重なものが紹介されている。第3章 若桜線で、鉄路を通学路として歩く生徒たち。線路を歩くことが出来た和やかな時代に思いを馳せる。大雪が去った後の大畑線正津川駅。屋根に降り積もった雪の印象的なこと。大雪の後の空の美しさは北国に住むものが味わう特権だ。名寄線、標津線といった今はなき路線たちの美しい風景。第4章 宗谷線、標津線、日高線の北海道ならではの自然を背景とした鉄道風景。特に新冠-節婦間の写真が掲載された日高線は、線路が長く海のすぐそばを走る抜群の車窓を持つ路線。3編成の気動車が出発を待つ全盛期の興部駅。名寄方面、紋別方面、雄武方面の3本だろう。このあたりは、私の父が、蒸気機関車撮影のため、何度も鉄道で訪れたところだ。倶知安付近を走るC62重連による急行「ニセコ」。夜景に思える。急行「ニセコ」が倶知安付近を、夕刻に通過するダイヤだったかどうか、私は覚えていなかったので、この写真は逆に印象的だった。国鉄の象徴であるスワロー・エンジェルのエンブレムを付けたC622も、ニセコを牽いた。宮古線田老駅付近。ネコと鉄道の風景はとてもしっくりいく。旧式の国電たちの姿。当時の車両たちは、それはそれで味があった。後藤寺線、筑前庄内-船尾で鉱業所の前を行く列車。鉱山と鉄路という往年の産業を象徴する一コマ。1980年5月、佐賀線諸富-筑後若津間を行く急行「ちくご」。佐賀線は1987年に廃止となったが、筑後川昇開橋は重要文化財としていまも姿を残している。多くの貴重な文化遺産が取り壊されてしまった北海道の現状と比べるとうらやましい。ちなみに、いま現在、国内で使用されている可動式の鉄道橋梁は、四日市市にある末広橋梁のみであり、私は、先日、三重県までその橋を見物に行きました。以上、印象的な写真を羅列的に印象をまじえてかかせていただいたが、これらはあくまでほんの一部。是非とも本書を買って、素晴らしい数々の写真を目にしていただくことをオススメします。

ココパナ さん | 北海道 | 不明

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読書メーターレビュー

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • オサム兄ぃ さん

    著者は1935年生まれで、今年卒寿を迎える鉄道写真家の草分け。分野を切り拓き、スタイルを作り出してきた「神様」とのこと。疾走するSLを被写体にしたメカニカルな美しさ・力強さを切り取る’60年代・’70年代の写真から、陸奥の新緑を抜けて駆け抜けるE3系のボディーに一瞬写る「がんばろう東北!」のロゴまで、実に多様多彩な作品を楽しむことができる。鉄ヲじゃなくてもとっても嬉しいです。お誕生日にプレゼントしてくれたミドリちゃん、本当にありがとう!

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広田尚敬

1935年、東京都生まれ。プロ写真家は24歳から。以来鉄道を撮影し、2021年2月現在、85歳を迎えても現役

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