岡田先生の著作集もいよいよ最終刊。 随分と歴史の見方を教えてもらいました。

これは歴史学を学ぶ者には必読の書だと思う。大学の史学科では一般的に講じられないが、重要な事項がたくさん書いてある。最初の歴史記述を中国の司馬遷とギリシアのヘロドトスから始まると、はっきりと書いてある本は意外と少ない。そして民族とは何か、近代とは何かなど、分かりやすくその本質が論じられている。こうした視点は困ったことに、意外と日本の大学の歴史学では扱わないのだ。近代の本質も、岡田氏の本を読めばより理解が深まる。ステートならステートで、その言葉の本質から丁寧に説明されている。非常に学ぶべきものが多い本である。

邪馬台国についての議論されている箇所が重要である。非常に説得的な議論であり、他の凡庸な歴史学者を凌ぐ議論だ。まず邪馬台国の書かれた中国の歴史書の問題点から丁寧に説明がなされ、邪馬台国の記述について充分に批判的な検討が加えられる。そしてつぎに具体的な検証に入るが、そこでも興味深い議論が展開される。邪馬台国の議論以外にも日本古代の問題点について書いてあるが、邪馬台国議論だけでも読む価値が絶大である。この本を読まなければ、日本古代史についてまともな認識は持てないのではないだろうか。そのくらい面白い本である。