韓流ドラマのBGMとして使えそうなほどしっとりと始まり、自作品からのデフォルメされた複雑な舞踊リズムの引用など、いくつか類似する楽想が支配的な曲集。歌詞の意味を聞き取る云々という音楽が主ではなく（多声的なマドリガル）、ポップな象徴的記号として銀色氏の言葉をも「引用」し、自作の素材を含め執拗なまでに飽和的に蕩尽するかのよう。虚ろな哀愁に満ちた「資本主義的な現代シリアス唱歌」の20年の歩み。

東混のプログラムで時たま見かけては、銀色夏生のメロメロな詩（というよりコピー？！）に一体どんな現代音楽を？！と、以前から少々気になりつつも、これまであまり耳にする機会が無かったこの作品群。フタを開けてみると、第１集の辺りでは、「一般愛好家向けに書いたのね」的に落ち着いて聴いていましたが、いやいや途中からブッ壊れてきて…真面目なんだかおちょくっとるんだか…とはいえ恐ろしく高度な技法を駆使しているようにも聞こえ…なるほどマドリガル、循環的に記憶を錯乱されます。ある意味、麻薬か…これ、曲によっては多分演奏が極度に難しい。手拍子が微妙におっかなびっくり…今後、合唱コンクールで流行ったりして？

乾いた音の響きの中に透明なロマンティシズムを感じさせる作品集です。トラック最後の「オーケストラのための愛の歌」はしっとりとぬれた草原から、ゆっくりと水蒸気が天に昇っていくような情景をいつも想像してしまいます（変かな？）現音嫌いな友人もこの曲だけは気に入ってくれました。