数枚ある詩集の中でも、北山修本人の歌による作詞集。相変わらず歌唱力はあまり無いが、不思議と北山さん独自の世界観があり、聞き込むほどに良さが分かってくるアルバムです。

「ばあすでいこんさあと（２５才）」「35才バースデー・コンサート」そして45才のコンサートはとばして、本作がさ三つ目のバースデイコンサートの実況盤となる。演奏内容も、演奏こそ違っているが殆ど同じ、mcも35才の時とあまり変わってない。しかしアルバムを通して聴いているとほのかに渋くも幼さを感じさせる、不思議な雰囲気がある。完成度的には35才のアルバムがいいが、これはこれで、良い。

北山が若い！下手くそな演奏もMCもみずみずしい。客も若いネエちゃん達ばかりなのでノリもよく、北山とのかけあいも面白い。ゲストも豪華！端田宣彦とクライマックス（『二人だけの旅』『花嫁』を熱唱）、加藤和彦（『あの素晴らしい愛をもう一度』をいやがる北山とデュエット）、ジローズ（杉田二郎が北山と『夕日よおやすみ』を、ジローズが『青春のわかれ道』、そしてお約束の『戦争を知らない子供達』はザ･ムッシュと谷村新司…当時はロックキャンディーズに在籍…とともに大合唱）記録としても貴重だ。ちなみに曲は全て北山修の作詩である。

これ、音楽としては完成度すごい低いですよね。歌は下手だし中途半端だし、北山氏がアイドルだったからこそ成り立ってるようなもんですよ。ファンの女の子達の声援が凄い。時にはかけあいもあるくらい。ステージの熱気も伝わってくるし、何より「はしだのりひことクライマックス」とか「ジローズ」、「加藤和彦」がゲストで出演するところなんかは、フォークルの凄いファンとか、当時のフォークに興味を持ってる人は楽しめますよ。 もっとも、俺はファンなんで、このアルバム好きです。興味深いしMCも面白く感じます。不器用なギターも味を感じます

実質ファーストアルバムではないのだが、本人の希望で「ファースト」と銘打ってリリースされた。その名の通り、ここにならんでいるセンチメンタルな曲の数々はそれまでの作品とはかなり違う、成長した北山の本質をよく表した物と思う。（これ以降の彼の作風もこのアルバムの延長線上にある）どの歌も重たく、辛い。『今、私の夢は壊されねばならない。今、あの人の夢が壊れたように。』『帰ろうかな……そうだね。』『さようなら、君よ。さようなら、僕よ。』様々な物に甘えてばかりいる自分と決別しようとしている北山修が見える。

久しぶりにこのアルバムを聞きたくて以前ＣＤ化されていないか真剣に探しました。ファンとしてＣＤ発売されとても嬉しく思います。

この盤を初めて聞いたときは、諦めやうつむきなその詩の世界にとてもショックを受けました。夢だとか希望といったものじゃ無く現実の暗さがにじみ出た、苦いアルバムです。