『セミラーミデ』ギター・ソロ版　イザー・エリアス（２ＣＤ）

ロッシーニのオペラ『セミラーミデ』を
ジュリアーニがギター・ソロ用に編曲！

オペラ・セリア『セミラーミデ』は、ロッシーニ[1792-1868]がベートーヴェンの『英雄』を聴き、面会も果たしたのちに書かれた作品。その影響もあってか、序曲にもきちんと劇中素材が使われ、オーケストレーションも充実、しかも３時間近い大きな規模となっているなど、作曲に時間をかけた渾身の作品に仕上がっていることでも知られています。
　1823年にヴェネツィアで初演されたこのオペラのあらすじはこんな感じです。王女セミラーミデはかつて夫の王を毒殺し、15年後に行方不明になっていた息子のアルサーチェに自分の子とは知らずに恋をし結婚を望みますが、暗闇での争いの混乱の中で、その息子に間違って殺されてしまいます。殺した相手が実の母であることを知ったアルサーチェは自殺を図ろうとしますが周囲に止められ、やがて何も知らない群衆の、新王アルサーチェを歓迎する合唱の中で幕という、どこかオイディプスを思わせる内容。
　こうした題材の問題や、作品の歌のパートが難しすぎたこともあってか、初演からしばらくの後にはあまり上演されなくなり、２０世紀前半にはまったく演奏されず、１９６２年にスカラ座でサザーランドが歌ったのが２０世紀初の上演とされています。以後、サザーランドは各地でこのオペラを歌い、レコーディングもおこないますが、それらは慣用版での演奏で、完全版での上演はさらに１９９０年のメト、ジューン・アンダーソンの上演まで待たなければなりませんでした。

　今回登場するギター編曲版は、このオペラをギター１本で表現してしまおうというすごいもので、慣用版規模の１１６分という演奏時間となっています。
　編曲者はイタリアの作曲家、マウロ・ジュリアーニ[1781-1829]で、最初チェロ、次いでヴァイオリンを学んだあとに、独学でギター演奏の技術を高めています。この間、対位法も学んでおり、作曲もおこなっていますが、ジュリアーニはギタリスト兼ギター音楽の作曲家として身を立てることを決意。彼は早くに結婚し、１８０１年には子供も誕生していましたが、オペラ全盛の当時のイタリアでは、ギターでの活躍は難しく、ひと世代上のカルッリと同じく国を出ることとなります。
　２０代なかばにウィーンを訪れたジュリアーニは、その後、１３年間に渡って同地を拠点に活躍、同地でのギター人気の火つけ役となり、ベートーヴェンやシューベルト、ロッシーニ、サリエリ、フンメル、シュポーア、パガニーニらと交流します。特にベートーヴェンとは関わりが深く、その演奏を聴いたベートーヴェンが「ギターは小さなオーケストラだ」と絶賛する一方、ベートーヴェンの指揮する交響曲第７番の初演では、ジュリアーニがチェロ奏者として参加し、その経験を『グラン・ポプリ』にも織り込むといった具合でした。

　当アルバムで演奏しているイザー・エリアスは、１９７７年生まれのオランダのギタリスト。使用楽器はギターの古楽器ともいうべきカルロ・グァダニーニの１８１２年モデルで、ロッシーニの名技的オペラを見事にギターに移し替えたジュリアーニの力作を素晴らしい演奏で味わうことができます。

【収録情報】
・ロッシーニ：歌劇『セミラーミデ』（マウロ・ジュリアーニ編曲ギター・ソロ版）
　イザー・エリアス（ギター）

　録音時期：2008年10月21-26日
　録音方式：デジタル（セッション）
　世界初録音

Rossini: Semiramide (arr. for solo guitar by Mauro Giuliani)
CD1
1.Overture [13:32]
2.Terzetto: Là dal Gange [5:52]
3.Quartetto: "Di tanti Regi e Popoli" - Allegro [2:03]
4.Quartetto: ""Di tanti Regi e Popoli" - Andante [2:13]
5.Quartetto: "Di tanti Regi e Popoli" - Allegro [1:21]
6.Quartetto: "Di tanti Regi e Popoli" - Allegro - Adagio [4:35]
7.Cavatina: "Ah, quel giorno" - Andantino [3:06]
8.Cavatina: "Ah, quel giorno" - Allegro [3:35]
9.Duetto: "Bella imago degli Dei" - Allegro giusto [2:26]
10.Duetto: "Bella imago degli Dei" - Andantino [2:01]
11.Duetto: "Bella imago degli Dei" - Allegro Vivace [3:50]
12.Cavatina: "Bel raggio lusinghiero" - Andante grazioso [4:54]
13.Cavatina: "Bel raggio lusinghiero" - Allegretto [3:19]
14.Duettino: "Serbami ognor si fido il cor" - Andantino [4:36]
15.Duettino: "Serbami ognor si fido il cor" - Allegro giusto [3:54]
16.Seconda Marcia [1:55]
17."Giuri ognuno" [5:47]
18."Qual mest gemito" [4:23]
19."Ah! Sconvolta nell'ordine eterno" [4:38]
CD2
1.Duetto: "Se la vita" - Allegro [2:55]
2.Duetto: "Se la vita" - Andantino [3:36]
3.Duetto: "Se la vita" - Allegro [6:35]
4.Aria: "In si barbara sciagura" - Andantino [3:03]
5.Aria: "In si barbara sciagura" - Allegro [2:47]
6.Aria: "In si barbara sciagura" - Allegro vivace [3:59]
7.Aria: "Deh ti arresta" - Andantino [2:33]
8.Aria: "Deh ti arresta" - Allegro [5:42]
9.Preghiera: "Al mio pregar t'arrendi" [2:23]
10.Terzetto: "L'usato ardir" [2:23]
11.Coro "Vieni Arsace" [1:44]