ブリテン・コンダクツ・ブリテン　Ｖｏｌ．３（１０ＣＤ）

ブリテン・コンダクツ・ブリテン Vol.3

ブリテンの自作自演集第3弾。ブリテンが作曲した歌劇の中では比較的マイナーな作品5枚分と、ジョン・カルショウのプロデュースによる鮮烈な録音によって今もなお決定盤とされる『戦争レクィエム』をはじめとした声楽曲を満載したBOXセット。この『戦争レクィエム』にはブリテン自身のリハーサル風景が付いています。
　ブリテンが来日した折に観劇した能「隅田川」にインスパイアされたという『カーリュー・リヴァー』、旧約聖書の挿話に基づく『燃える炉』、新約聖書に基づく『放蕩息子』の3作は、まとめて“教会寓話三部作”と呼ばれ、チェスター地方に伝わる中世の神秘劇を台本として用いた『ノアの洪水』も含めて、青少年に対する啓蒙的な要素を含んだオペラ。
　『小さな煙突掃除夫』は、『オペラを作ろう』と題された舞台作品の第二部にあたるもので、少年たちがオペラ上演をめざして台本を選び、舞台装置を作ったりする様子が演じられる第一部では、聴衆も合唱としてオペラに参加すべく練習をしたするひと幕もあるとか。そして実際に上演されるオペラが『小さな煙突掃除夫』というわけです（もちろん、このレコーディングでは合唱もプロのコーラスによって歌われています）。
　これらの作品はすべて、教会での上演を念頭に作曲されたもの。教会が宗教的な信仰の対象としてだけではなく、地域社会の文化的な中心のひとつであり、青少年に対する教育の場でもあるという、ブリテン自身が育まれてきた社会環境を反映した作品とみることができます。
　一方、カップリングされた声楽作品には、ブリテンのより深い宗教観をかいま見ることができるでしょう。第2次大戦に散った兵士たちへの鎮魂の思いを込めたモニュメンタルな『戦争レクイエム』と、対照的な生命への賛歌である『春の交響曲』を両端とするこれらの作品には、いずれも伝統的な宗教の教義や倫理観を背景としつつも、それだけでは収まりきらない、より個人的な告白を聴き取ることが可能でしょう。『戦争レクイエム』で伝統的なラテン語の典礼文と並んで、第1次大戦で戦死したヴィルフリード・オーウェンの反戦詩が歌われていることは、その直接的な表明とも受け取れます。
　この10枚組のボックスは、そうしたブリテンの宗教的な信条をうかがわせる興味深い一組といえるでしょう。


Disc.1
歌劇『燃える炉』全曲

Disc.2
歌劇『カーリュー・リヴァー』全曲

Disc.3
歌劇『放蕩息子』全曲

Disc.4
歌劇『ノアの洪水』全曲*

Disc.5
歌劇『小さな煙突掃除人』全曲
双子座の変奏曲
合唱曲『少年十字軍』

Disc.6
カンタータ『聖ニコラス』
祝祭カンタータ『キリストと共にいて喜べ』

Disc.7
キャロルの祭典
御子が生まれたもうた
『金曜の午後』〜歌曲
詩編150番

Disc.8
春の交響曲
カンタータ・アカデミカ**
聖セシリアの讃歌**

Disc.9&10
戦争レクィエム全曲（リハーサル風景付き）
sequence

ガリーナ・ヴィシネフスカヤ(S)
デヴィッド・ヘミングス(Boy-Sop）、
ピーター・ピアーズ(T)
ロバート・ティアー(T)
ジョーン・シャーリー=クァーク(Br)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br)
ワンズワース・スクール少年合唱団
イングリッシュ・オペラ・グループ
ロンドン交響楽団
指揮：ベンジャミン・ブリテン
ノーマン・デル・マー*
ジョージ・マルコム**