マイケル・ナイマン/オペラ(3CD)
マイケル・ナイマンのレーベルのバック・カタログから、歌曲、サウンドトラック、オペラというジャンルごとに、既存の個々のディスクを5色に光るメタリック色のケースに収めたボックス・セットが登場。
当セットにはナイマンのオペラ2作品を収録。凝ったストーリーをもつリブレット、ナイマン十八番のミニマル風音楽と、『マン・アンド・ボーイ』で見せるダダイズム風作風など、ナイマンの様々な作風を味わうことができます。(キングインターナショナル)
【収録情報】
・オペラ『マン・アンド・ボーイ:ダダ』 リブレット:マイケル・ヘイスティングス
息をするにはチケットをお求めください
バスのチケットの他に購入したほんのわずかなもの
もう恐れないでいただけませんでしょうか
それはおもしろいガラクタのようですね
逃げろ!
40頭のヒツジと20頭のトナカイ
咳とイビキが万病をひろめる
小便以外禁止
アリジゴク
英国紅茶の有名なカップ
これはよかった〜ワーテルローの終焉に関する熟考
わたしはタンゴが超得意
バイクを見せろ!
チャック・ペリッシュ・シング!
マイケル、おたんじょうびおめでとう。
ハンキー・パンキーにはこまったもんだ
ハマースミス広場風のラタン
100もお店があるけど名前がないんだな
ダダについてちょっと説明してみようかと
ジョン・グラハム=ホール(テノール)
ウィリアム・シェルダン(ボーイ・ソプラノ)
ヴィヴィアン・ティアニー(ソプラノ)
マイケル・ナイマン・バンド
ポール・マクグラフ(指揮)
ダダイストとして活動を続け、ナチから「退廃音楽」推進者として排斥され、ロンドンで貧困生活を送ったクルト・シュヴィッタースへのオマージュとして書かれたリブレットに、ナイマンが曲をつけたものです。物語の舞台はロンドン、一枚のバスのチケットをめぐる、少年と男をとりまく人間模様が描かれています。男のモデルはシュヴィッタースで、物語の中で画家であり詩人であり作曲家であり写真家であり劇場評論家と実に様々な顔をもっています。少年の母親に対するシュヴィッタースの愛情ともコンプレックスともつかない感情、シュヴィッタースの成し遂げようとした芸術を理解しようとする問答など、リブレットは時としてラブストーリー、時として禅問答のような様相です。器楽のところはナイマン得意のミニマルミュージック調できれいですが、声楽が入ると途端に「ダダイズム」に変身します。実に見事なシュヴィッタースへのオマージュとなっています。
・『ラヴ・カウンツ』(2幕の室内オペラ) リブレット:マイケル・ヘイスティングス
アンドリュー・スレイター(バス:パッツィー・ブレア)
ヘレン・ウィリアムズ(ソプラノ:エイヴリル・アインガー)
マイケル・ナイマン・バンド
ポール・マグラー(指揮)
『ラヴ・カウンツ』は、実社会で知り合うことは決してないような二人の愛の物語です。エイヴリルは、夫による暴力が原因で離婚した女性数学講師。パッツィーは、もうすぐボクサー生命が終わりを迎えようとしている、数字がまったく読めず、自分の字すら書くこともままならない男。バスで自分の降りる停留所の番号を言えないパッツィーをエイヴリルが助けるところから物語は始まります。
最初、エイヴリルは、パッツィーの職業を聞いて怖がりますが、ハエすらも殺すことのない優しい心のパッツィーにすぐに心ひかれるようになります。彼女は彼に数字を教え、銀行の口座の開き方なども教えます。最後の場面では、大怪我をして車椅子に乗せられたパッツィーにエイヴリルが付き添って、秋の木立の中を散歩しながら足し算や引き算をしている場面で終わる、というなんともシュールなエンディング。
ナイマンによる音楽は、じわじわと人の涙腺を刺激する美しさに満ちています。そしてどこか退廃的な香りがするのもまた魅力。