CD 輸入盤

最後から2番目の思想 アレクサンドル・タローが描くサティの世界(2CD)

サティ(1866-1925)

基本情報

ジャンル
:
カタログNo
:
HMC902017
組み枚数
:
2
レーベル
:
:
Europe
フォーマット
:
CD
その他
:
輸入盤

商品説明

鈴木淳史のクラシック妄聴記 第9回
「タローのあまりにもバロックなサティ」
より

 アレクサンドル・タローのピアノを最初に聴いたときは、その音楽の底から立ち上がってくるヒンヤリとした感触に、いささか近寄り難いものを覚えたものだった。その音楽が精妙で風通しのいいことはよくわかっているのだけれど、取りつく島がないようなクールさに躊躇してしまったのだ。ヒンヤリ系の演奏を嬉しがって聴く自分のような男でも、由来も知れぬクールさには、一歩身構えてしまうのである。

 今回タローが挑んだサティは、まさにアンチ・ロマンを声高に唱えた作曲家。早速聴いてみると、その相性の良さに改めて驚かされた。これまでのサティ演奏といえば、ロマンティシズムにベッタリの流儀もあれば、中世の神秘主義に根を張ったもの、さらにコチコチの現代流、あるいはポスト・モダンでございといわんばかりの軽〜いアプローチなど、様々なものがあったが、タローの演奏はこれらいずれのスタイルにも属さない。一言でいえば、ガッツリとバロック派。

 ピアノ独奏作品を集めた一枚目は、曲の合間に6曲のグノシェンヌを配置し、続けて聴くと、まるでバロックの組曲のようだ。緩急のリズムの交代が心地いい。トリルも快楽的。《メドゥーサの罠》では、一部にプリペアドしてあるピアノを使用するなど、音色へのコダワリも。
 そして、感情をだらだら引きずらないのがバロックの流儀。キビキビと表情を変え、そのザックリとした切断面に余韻を宿す。《干からびた胎児》の大袈裟で、やたらにカッチリと弾かれたフィナーレのあとに演奏された、グノシェンヌの第5番の退廃的な美しさといったら。

 ディスク二枚目は、四手や歌曲などのデュオ作品を収録している。エリック・ル・サージュとの精妙にして立体的な四手作品、むせかえるようなフランス語の発音がたまらないシャンソン歌手ジュリエットとの歌曲、そして《右や左に見えるもの》はイザベル・ファウストという、かなり贅沢なセッションだ。アンサンブルでのタローは、そのキッチリとした弾き方は変わらないが、快楽的なエキスが一層強く滲み出ているようにも感じる。
 わたしの場合、サティの作品は好きなのだが、何曲も続けて聴くと飽きてしまうことが少なくない。ただ、今回のタローの演奏ではそういうことはまるでなかった、ということは強調しておきたい。

(すずき あつふみ 売文業) 


エリック・サティ:最後から2番目の思想
アレクサンドル・タローが描くサティの世界
共演者も豪華!

洒落ていて物憂くてエスプリたっぷりでどこか不気味・・・そんなサティの音楽。考えてみれば、タローほどサティ作品にぴったりなピアニストはそういないのではないでしょうか。タローは持ち前の抜群のセンスで、プリズムのように刻一刻と変わる曲のニュアンスや洒落っ気を気持ちよく描いてみせてくれます。「指先の魔術師」タローが奏でる独特の音色にはドキッとさせられます。ピアノ・ソロだけでも充分たのしめますが、disc2の「デュオ」での豪華共演者陣も注目です。ル・サージュとのデュオは、これ以上ない、と思えてしまうくらいに息も音色もセンスもぴったり。本当にうまいフランス人がフランスものを弾くとこうなるのか、と思わず脱帽。ジュリエットは、タローが「理想のサティ歌い」と絶賛するシャンソン歌手で、パリのちょっと古びたカフェを連想させる、雰囲気たっぷりの歌を聴かせてくれます。「右や左に見えるもの」では、イザベル・ファウストが変幻自在の活躍。ヴァイオリンという楽器がもつ音色の意外な響きをたのしませてくれます。ゲリエのトランペットも実に見事。パリっとおしゃれに決まった、サティの新たなる名盤の登場です。
 ブックレットの裏表紙に書いてあるサイトにアクセスし、パスワードを入れると、ボーナストラックなどが入手できるという趣向もあります。
 ジャケットに用いられているイラストは、ジャン=コクトーによるサティ像。(キングインターナショナル)

【収録情報】
[CD1]ピアノ・ソロ編
1.グノシェンヌ第1番
2.舞踏への小序曲
3.ジムノペディ第1番
4.本当にぶよぶよした前奏曲
5.グノシェンヌ第2番
6.嫌らしい気取り屋の三つのワルツ
7.グノシェンヌ第3番
8.ピカデリー
9.自動記述法
10.グノシェンヌ第4番
11.操り人形は踊っている
12.メドゥーサの罠
13.冷たい小品
14.最後から2番目の思想
15.いくぶん生き生きと(モンマルトルのエスキースとスケッチより)
16.乾からびた胎児
17.グノシェンヌ第5番
18.ワルツーバレエ
19.世紀ごとの時間と瞬間的な時間
20.ばら十字団の最初の思想
21.金の粉
22.グノシェンヌ第6番
[CD2]デュオ編
1.梨の形をした3つの小品(1台4手のための)
2.ジュ・トゥ・ヴ
3.お医者さんのところで 
4.僕には友達がいた
5.エンパイア劇場のプリ・マドンナ
6.風変わりな美女(1台4手による)
7.右や左に見えるもの
8.シネマ(ミヨー編曲による1台4手版)
9.ダフェネオ
10.リュディオン(潜水人形)
11.再発見された像(C管トランペットとピアノのための嬉遊曲)
12.シテール島への船出
13.いいとも、ショショット

[CD1]
1-22:アレクサンドル・タロー(Pf)(12はプリペアード・ピアノ)
[CD2]
1-13:アレクサンドル・タロー(Pf)
1,6,8:エリック・ル・サージュ(Pf)
2,3,4,5:ジュリエット(声)
7,12:イザベル・ファウスト(Vn)
9,10,13:ジャン・ドゥルスクルーズ(T)
11:ダヴィッド・ゲリエ(Tp)
 録音:2008年4、5月

収録曲   

ディスク   1

  • 01. グノシェンヌ第1番
  • 02. 舞踏への小序曲
  • 03. ジムノペディ第1番
  • 04. 本当にぶよぶよした前奏曲
  • 05. グノシェンヌ第2番
  • 06. 嫌らしい気取り屋の三つのワルツ
  • 07. グノシェンヌ第3番
  • 08. ピカデリー
  • 09. 自動記述法
  • 10. グノシェンヌ第4番
  • 11. 操り人形は踊っている
  • 12. メドゥーサの罠
  • 13. 冷たい小品
  • 14. 最後から2番目の思想
  • 15. いくぶん生き生きと(モンマルトルのエスキースとスケッチより)
  • 16. 乾からびた胎児
  • 17. グノシェンヌ第5番
  • 18. ワルツーバレエ
  • 19. 世紀ごとの時間と瞬間的な時間
  • 20. ばら十字団の最初の思想
  • 21. 金の粉
  • 22. グノシェンヌ第6番

ディスク   2

  • 01. 梨の形をした3つの小品(1台4手のための)
  • 02. ジュ・トゥ・ヴ
  • 03. お医者さんのところで
  • 04. 僕には友達がいた
  • 05. エンパイア劇場のプリ・マドンナ
  • 06. 風変わりな美女(1台4手による)
  • 07. 右や左に見えるもの
  • 08. シネマ(ミヨー編曲による1台4手版)
  • 09. ダフェネオ
  • 10. リュディオン(潜水人形)
  • 11. 再発見された像(C管トランペットとピアノのための嬉遊曲)
  • 12. シテール島への船出
  • 13. いいとも、ショショット

ユーザーレビュー

総合評価

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仄かな詩情を湛える冷涼な響きは、シャンパ...

投稿日:2015/07/28 (火)

仄かな詩情を湛える冷涼な響きは、シャンパンよりむしろ芳醇辛口な日本酒を想わせる。味わい深い逸品。

曼珠沙華 さん | 群馬県 | 不明

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まあこれほど美しい音で弾かれたサティは、...

投稿日:2009/03/17 (火)

まあこれほど美しい音で弾かれたサティは、ちょっと聴いたことがない。サティのシンプルな書法は、奏者のセンスを丸裸にしそうだが、それがかえってタローの持つエスプリを全開させている感じ。特にタッチと表情の多彩さは、ほとんど「マジック」の領域。考え抜かれたプログラミングと合わせ、拘り派タローのサティ、最高の聴きどころ。録音には所々、会場(教会)の外でさえずっていた鳥の鳴き声が入っている。タローはそれを知っていて、あえてそのテイクを選んだとのこと。また2枚目最後の曲が終わった後にもちょっとした遊びが。タローとゲストたちが本当に楽しみながら作っていたことが、演奏だけでなく、そういったところからも伝わってくる。また、いつもながら

ちったん さん | さいたま市 | 不明

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サティへの愛が感じられる盤。何と言っても...

投稿日:2009/02/14 (土)

サティへの愛が感じられる盤。何と言ってもDisc2が貴重。歌曲、4手作品、「右や左に見えるもの」などを一同に集めたのは他にないんじゃないかしら。これまでの演奏と違う新たな驚きもあり(「メデューサの罠」でケージよりも前にサティがプリペアド・ピアノをやっていたって、知ってました?)CDの作りもお洒落。お遊びも入っていて聴いていて楽しいことこの上ない。演奏はサティの革新性に重点を置いた、明晰さが前面に出たもので、今までの作品集とは少し毛色が違うように思う。新たなサティ像を見せてくれたタローに感謝。

Billy Moon さん | 京都 | 不明

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