<弦楽四重奏曲全集>弦楽四重奏曲 第1-3番/同第4番（断片）　ダネル弦楽四重奏団

サイグン：弦楽四重奏曲全集
ダネル四重奏団

近代トルコを代表する作曲家、アフメッド・アドナン・サイグンによる弦楽四重奏曲です。
　サイグンは、1907年トルコのイズミールで数学教師の子として生まれました。13歳から音楽を学び始め、1922年にはマカル・テヴフィク・ベイの生徒となり、独学で和声法、対位法を学ぶようになります。後、音楽教師として生計を立てますが、1928年には奨学金を得てパリに留学、スカラ・カントルムでにダンディなど学びました。
　帰国したサイグンはアンカラで音楽を教え、更に近代化なったトルコの大統領によるオーケストラを指導。その頃トルコ音楽を対象と考えたバルトークの民族音楽収集に協力し、やがて自らもトルコ音楽の研究の第一人者となります。文化センターの監督官となり共和国人民党の音楽アドヴァイザーにも就任しました。監督官としてトルコ各地の研究旅行をした彼は「Voice and String Union」を組織、1947年にはトルコ中世の詩人を題材にしたオラトリオ「ユーヌス・エムレ」がパリで上演され、彼の西欧での名声が確立していきました。以後、仏、独、伊などで賞を得、ハンガリー政府からもバルトークとともにメダルの受賞をしました。
　サイグンは交響曲からオペラ、声楽曲まで、幅広い作品を残していますが、室内楽の作品群の中でも際立つ存在の弦楽四重奏曲は、完成された3曲と未完に終わった4曲が遺されています。
　彼のライフワークでもあった、民族音楽研究の成果が盛り込まれ、その意味ではバルトークの後継者とも言えるでしょう。また、バルトークが注目したハンガー音楽との類似点を持つトルコ音楽やイスラム音楽のリズムや音律などの素材が、作品のいたるところに見え隠れし、近代西欧的な響きとのミックスが絶妙に成されていることも、バルトークの弦楽四重奏曲との共通点を感じさせます。
　ダネル四重奏団は1991年ブリュッセルで創設、1993年にショスタコーヴィチ国際コンクールで第1位に輝いた若手の実力派団体です。近現代作品の演奏にも定評があり、最近もショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全集をリリースしたばかりで、ここでも持ち前の切れ味鋭いテクニックを披露しています。

アフメッド・アドナン・サイグン(1907-1991)
　弦楽四重奏曲第1番 op.27
　弦楽四重奏曲第2番 op.35
　弦楽四重奏曲第3番 op.43
　弦楽四重奏曲第4番 op.77（未完）

ダネル四重奏団

　マルク・ダネル（1st vn）
　ジル・ミレ（2nd vn）
　トニー・ナイス（va）
　ギィ・ダネル（vc）

録音：2003年12月、2004年9,11月 ケルンWDRストルベルガー通りスタジオ(デジタル録音)