オラシオ・カステジャーノス・モヤ

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無分別 エクス・リブリス

オラシオ・カステジャーノス・モヤ

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784560090237
ISBN 10 : 4560090238
フォーマット
出版社
発行年月
2012年08月
日本
共著・訳者・掲載人物など
:
追加情報
:
163p;20

内容詳細

「おれの精神は正常ではない、と書かれた文章にわたしは黄色いマーカーで線を引き、手帳に書き写しさえした」。主人公の男は、ある国家の軍隊による、先住民大虐殺の「報告書」を作成するため、千枚を越える原稿の校閲の仕事を請け負った。冒頭から異様な緊張感を孕んで、先住民に対する惨い虐殺や拷問の様子、生き残った者の悲痛な証言が、男の独白によって、延々とつづけられる。何かに取りつかれた男の正気と妄想が、次第に境界を失う。ときおりセックスを楽しむこともあるが、心はいっこうに晴れない。やむをえず郊外に逃げ出しても、心身に棲みついてしまった恐怖、不信、猜疑心に苛まれ、先住民の血を吐くような証言が反復される。やがて、男の目には「虐殺者の影」が見え隠れし、身の危険を感じるようになる…。

【著者紹介】
オラシオ・カステジャーノス・モヤ : 1957年、エル・サルバドル人の父とホンジュラス人の母との間にホンジュラスの首都テグシガルパで生まれる。エル・サルバドル大学で文学を専攻するが、大学への軍隊介入により、カナダ、コスタリカに亡命し、メキシコでジャーナリズムの仕事に従事。内戦により亡命したエル・サルバドルの知識人たちを物語る処女長篇『ディアスポラ』(88年)で、セントロアメリカ大学が授与する国民小説賞を受賞。91年、エル・サルバドルへ帰国するが、小説『吐き気―サン・サルバドルのトーマス・ベルンハルト』(97年)が反国家的だと脅迫され、再び亡命を余儀なくされる。11年、アイオワ市に移り、アイオワ大学の教授をつとめている

細野豊 : 1936年神奈川県横浜市生まれ。東京外国語大学スペイン語科卒業。通算十七年余りラテンアメリカ諸国(メキシコ、ボリビア、ブラジル)に滞在。日本文藝家協会、日本詩人クラブ、日本現代詩人会、日本ペンクラブ会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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読書メーターレビュー

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  • 藤月はな(灯れ松明の火) さん

    先住民に行われた虐殺と凌辱を教会で公開すべく、その記録を検閲する役職についた無神論者の男。記録にしか残っていない現実だが紛れもなく、「今」と地繋がりであるということへの空恐ろしさ、記録に詩を見出す一抹の不可解さ。それとリンクする男に捨てられ、泣く女や脚が不潔な美女、勘違いした男前への苛立ちや自身の優越感と絡み合い、「関係者」という位置づけがなされる。やがて虐殺の時間性と距離的関係によって「傍観」していた筈が地繋がりの今によって断罪される。そして逃げたとしても精神に刻み込まれた断罪からは決して逃げられない。

  • りつこ さん

    ヘヴィ…。主人公の抱く恐怖や猜疑心が現実なのか妄想なのか、もしかしてこの報告書自体も彼の妄想の一部なのではないか…。息継ぎができないような文章に読んでいるこちらも正気を失いそうになる。唯一の救いが彼のとほほなアバンチュール(これは笑える!)と残虐な文章の中にさえ美しい文章や詩を見出す感性。正気を失ってむしろ良かったのだと安堵は最後の文章を読んで打ち砕かれた。

  • きゅー さん

    先住民に対する虐殺に関する報告書の点検のために雇われた「わたし」。報告書をつぶさに確認する彼の精神はしだいに病み、虐殺者が自分を追いかけているように思えてくる。そんな内容だからこそ、語り手のダメ人間さには笑えてくる。淋病をうつされてマジギレし、同衾した女性の恋人に殺されるんじゃないかと真っ青になる語り手。こうした南米の暴力的なユーモアは独特だ。濃くて、ギラギラしていて、光と影のコントラストが強い。それにしても本書では暴力からセックスへの移行があまりにも素早すぎて、両者の間に隙間がない。どうにも奇妙な一冊。

  • けいと さん

    〜俺の精神は正常ではない〜読み始めから読んだことを後悔してしまうような書き出し。独特のうねるような文章。どこまでが主人公の妄想なのか読んでいるこっちも巻き込まれていく。残酷な描写と主人公の笑えるエピソードのバランス、物語の長さも絶妙。これ以上だと彼とともに逃げ出して最後まで読めなかったかも。目の前に現実を突きつけられて呆然とするしかない終わり方もすごい。

  • 鷹図 さん

    某国で行われた先住民大虐殺のレポートの、「校閲」を請け負う主人公。生き延びた人々の悲惨な証言を精査していくうち、そこにある種の詩性を見出だした彼は、感銘を受けた一文をメモして持ち歩くまでになる。とりわけ、冒頭1行目に置かれる「おれの精神は正常でない」という一文が示唆的。その後彼は持ち前の被害妄想を拗らせ、狂気に囚われてしまうのだから。南米作家と魔術的リアリズムの関係を自嘲気味に語るなど、ユーモアにも富んでいるが、ラストのメールの存在は、この小説が全くの虚構ではないことを改めて突きつける。傑作を読んだ。

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