(こちらは新品のHMVレビューとなります。参考として下さいませ。中古商品にはサイト上に記載がある場合でも、封入/外付け特典は付属いたしません。また、実際の商品と内容が異なる場合がございます。)
グレート・コンダクターズ(10CD)
かつてエルミタージュ(後のアウラ)・レーベルから発売されて大評判となった往年の名指揮者たちのライヴ録音が、HMVジャパンの要請で10枚組セットとして復活します。
セル指揮クリーヴランドのシューマン2番&『海』&ラコッツィー行進曲、クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘン・フィルのブラ2&ベト8、フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの『田園』ほか、シェルヘンの『運命』&リハーサル、チェリビダッケの『未完成』&『くるみ割り人形』、若きサヴァリッシュのベト4&シュベ3&ブランデンブルク第5番などなど、どれも聴き逃せない名演揃い、さらにバルビローリ指揮ハレ管、ビーチャム&ロイヤル・フィル、アンチェル&チェコ・フィル、さらにロシア出身の「謎」の指揮者(?)デルマンのブルックナーまで充実のラインナップ。
どの音源も放送局所蔵のマスターテープを使用しているため、モノラルながらレンジも広くたいへん良好な音質であることも嬉しいところで(CD-7,CD-9のみステレオ)、特にフルトヴェングラーの一枚は、この指揮者の音源としては最良のクオリティとすでに世評の高いものとなっています。
CD-1
セルのシュマ2、海、ラコッツィー行進曲
スタジオ録音では比較的クールな面が取り沙汰されるセルですが、実演となるとかなり情熱的な面を見せることも知られており、ライヴ盤の増えてきた最近では、そうした印象も定着した感があります。中でも極め付きといえるのがこのルガーノでのライヴ録音。
1957年といえば、あの『エロイカ』や『グレート』のスタジオ録音をおこなった年でもありますが、当時のセル&クリーヴランドがいかに凄かったかは、この3曲のライヴを聴けばさらに理解が深まるというもの。シューマンでの恐るべき切れ味、『海』での高揚感、そして『ラコッツィー行進曲』での、さすがのクリーヴランドも困惑するほどの激しいテンポ操作とまさに聴きどころ満載。超人的名技を満喫できる一枚です。音質良好。
・シューマン:交響曲第2番ハ長調 op.61
・ドビュッシー:交響詩『海』
・ベルリオーズ:『ファウストの劫罰』〜ラコッツィー行進曲
クリーヴランド管弦楽団
ジョージ・セル(指揮)
録音:1957年5月31日、ルガーノ[ライヴ]
CD-2
バルビローリのヴォーン・ウィリアムズ、他
ヴォーン・ウィリアムズの交響曲第8番は、バルビローリが1956年に初演し、作曲者からの献呈も受けているという作品。各楽章ごとに大きく楽器編成の異なる音楽が特徴で、バルビローリの演奏はときに荘重にときに滑稽にと、非常に表情が豊かなのがポイント。
『エリザベス朝組曲』は、バルビローリが1942年に書き上げた編曲作品。友人の作曲家、アーサ・ベンジャミンに触発されて接した『フィッツウィリアム・ヴァージナル曲集』から感銘を受け、それらの中からバードやファーナビーなどによるいくつかの曲をオーケストラ用にアレンジしたというものです。その音楽は、冒頭からまさに英国的としか言いようのない荘重かつ気品に満ちた雰囲気が素晴らしく、編曲は近代でも精神は昔の大英帝国といった風情が、ゆったりした部分はもちろんのこと、快活な部分に至るまで十分な品格を与えていて美しい限り。
続くスペインつながりの2作品では、好調時のバルビローリならではの激しくエネルギッシュな演奏が楽しめます。音質も良好。
・『エリザベス朝組曲』[バルビローリ編曲]
・ヴォーン・ウィリアムズ:交響曲第8番二短調
・R.-コルサコフ:スペイン奇想曲 op.34
・シャブリエ:狂詩曲『スペイン』
ハレ管弦楽団
ジョン・バルビローリ(指揮)
録音:1961年4月11日、ルガーノ[ライヴ]
CD-3
アンチェルの新世界、展覧会の絵、他
チェコ・フィル黄金時代のライヴがいかに見事なものだったか実感させてくれるアルバム。どれも名詞代わりの得意レパートリーということもあるのでしょうが、3曲共に快速なテンポによるストレートな演奏に仕上がっているのがポイントです。アンチェルのしゃきっと直截な音楽運びに、オーケストラがあるときは無類にやわらかく美しく、またあるときは野趣に富む豪快なサウンドで応えるさまからは、たぐい稀な相性の良さを見せたというこのコンビの魅力がよく伝わってきます。
・スメタナ:歌劇『売られた花嫁』序曲
・ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調 op.95『新世界より』
・ムソルグスキー/ラヴェル編曲:組曲『展覧会の絵』
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
カレル・アンチェル(指揮)
録音:1958年10月10日、アスコーナ[ライヴ]
CD-4
クナッパーツブッシュのブラ2、ベト8
アンチェルとは対照的にこちらは超スロー・テンポによるクナ独特のデフォルメ演奏が楽しめます。特にベートーヴェンの遅さは驚くべきもので、冗談とも真面目ともつかぬ雰囲気の中、聴き進むうち次第に慣らされ、最後には飲みこまれてしまうといった趣の分解再構築巨大交響曲的な世界が圧巻です。
これに較べるとブラームスは異常というほどではありませんが、やはりリズムはヘヴィーで、しかも通常滑らかなはずのこの曲がゴツゴツした風合いで巨大に響き渡るのですからやはりこれも怪物的演奏と称えておきましょう。意外な楽器バランスやテンポ・ルバートもクナ流の謎かけなのかもしれません。
・ベートーヴェン:交響曲第8番ヘ長調 op.93
・ブラームス:交響曲第2番ニ長調 op.73
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)
録音:1956年10月18日、アスコーナ[ライヴ]
CD-5
チェリビダッケの未完成、くるみ割り人形
壮年期のチェリビダッケによる注目演奏。許光俊慶応大学教授の文章を引用しておきましょう。
「壮年期のチェリビダッケならではの鮮明をきわめた演奏で、テンションも高く、演奏者が追い込まれたように弾いているのがよくわかる。
超辛口の「未完成」はまるでギリギリとめいっぱいの力で張られた鋼鉄線のようだ。といって、むやみと固い音楽ではない。チェリビダッケならではの、妖しく色彩を変える和音の魔術が聞こえてくる。
『クルミ割り人形』も、恐ろしくマジメな演奏だ。この曲をこれほどの熱狂的な表情で演奏した例も珍しいだろう。《ロシアの踊り》はひとことで言うならムラヴィンスキーの『ルスラン』みたい。《花のワルツ》はまるで二拍子に聞こえるほど決然とした進行。このワルツ、なんと驚いたことに、まるでブルックナーの交響曲のように、終着点目指して白熱していくのだ! さすがに抵抗感を覚えつつも、聴き手を力づくで説得してしまう迫力に負かされてしまう。
けれど、私見ではそれ以上に魅力的なのが《アラビアの踊り》で、まさに退廃的としか言いようがない雰囲気が醸し出されている。夏の昼間のようなけだるさ、微妙な官能のうずき・・・逸品だ。」
・シューベルト:交響曲第8番ロ短調 D.759『未完成』
・チャイコフスキー:組曲『くるみ割り人形』 op.71a
スイス・イタリア語放送管弦楽団
セルジウ・チェリビダッケ(指揮)
録音:1963年6月14日、ルガーノ[ライヴ]
CD-6
ビーチャムのベートーヴェン第7番、他
・ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調 op.92
・ヘンデル/ビーチャム編曲:組曲『バースの恋』
・ディーリアス:楽園への道
・シベリウス:『カレリア』組曲〜行進曲風に
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
トーマス・ビーチャム(指揮)
録音:1957年10月20日、アスコーナ[ライヴ]
CD-7
デルマンのブルックナー第9番
1923年にレニングラードに生まれ、1994年にミラノで亡くなったユダヤ系ロシア人指揮者、ヴラディーミル・デルマンは、1974年にイタリアに亡命し、以後、イタリアで活躍した人物。その演奏は風貌と同様、きわめて個性的なもので、このアルバムに収められたブルックナーの第9番でも独特のルバートやバランスで起伏の大きな流れを作り出し、大きなスケールの音楽を構築しています。ステレオ録音。
・ブルックナー:交響曲第9番二短調
エミリア・ロマーニャ「アルトゥーロ・トスカニーニ」交響楽団
ヴラディーミル・デルマン(指揮)
録音:1994年[ライヴ]
CD-8
サヴァリッシュのベト4、シュベ3、バッハ
今は老大家となったヴォルフガング・サヴァリッシュ[1923- ]が、42年前、40歳のときにスイス・イタリア語放送管弦楽団に客演した際のコンサートをライヴ収録したアルバム。現在のサヴァリッシュとは別人のような切れ味シャープなベートヴェン第4番が何といっても聴きものですが、シューベルトの第3番での駆け抜ける軽やかさも好感触。珍しく交響曲と組み合わされるブランデンブルク協奏曲では、名手ルチアーノ・スグリッツィが妙技を聴かせてくれます。
・J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調 BWV.105
・シューベルト:交響曲第3番ニ長調 D.200
・ベートーヴェン:交響曲第4番変ロ長調 op.60
ルチアーノ・スグリッツィ(cem)
スイス・イタリア語放送管弦楽団
ヴォルフガング・サヴァリッシュ(指揮)
録音:1964年6月4日、ルガーノ[ライヴ]
CD-9
シェルヘンの運命&リハーサル
ヘルマン・シェルヘンの豪快な『運命』をにぎやかなリハーサルと共に楽しめる興味深いアルバム。
・ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調 op.67『運命』
[リハーサル(44:40)と全曲演奏]
スイス・イタリア語放送管弦楽団
ヘルマン・シェルヘン(指揮)
録音:1965年2月24-26日、ルガーノ[ライヴ]
CD-10
フルトヴェングラーの田園、モーツァルト
ベルリン・フィルを率いたルガーノ公演のライヴ録音。ルツェルンでのフィルハーモニアとの第九同様、当時のスイスの放送局の優秀さが偲ばれる鮮明な音質に感謝。思索的な『田園』と、フルトヴェングラーのモーツァルトの中で最高とされるピアノ協奏曲第20番の名演が味わえます。
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番二短調 K.466
・ベートーヴェン:交響曲第6番ホ長調 op.68『田園』
イヴォンヌ・ルフェビュール(p)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)
録音:1954年5月15日 ルガーノ、アポロ劇場[ライヴ]