現在のトロンボーン界の頂点に立つといっても過言でないミシェル・ベッケ。1980年代〜1990年代にかけてはパリ・トロンボーン四重奏団のリーダーとして何度か来日を重ね、そのコンサートは現在でも語り継がれています。
今回のレコーディングは、ベッケの弟子たちを中心としたトロンボーン・アンサンブル「オクトボーン」を率いたもの。アンサンブルのメンバーは、パリ管弦楽団首席奏者、スイス・ロマンド管弦楽団首席奏者、リヨン管弦楽団奏者、リヨン国立歌劇場管弦楽団バストロ奏者など、フランス語圏を中心にフランス・トロンボーン界の首席クラスが集結しています。トロンボーンに加えてテューバはパリ管弦楽団首席奏者、他にパーカッションを2名が参加しています。
収録曲目はニロヴィッツ、ドルリューのオリジナル作品と、ラヴェル、ドビュッシー、バーンスタイン、コロンビエの名曲をベッケのためにアンサンブル編曲されたものになります。特にニロヴィッツ:『バルカン組曲』、バーンスタイン:『ウエスト・サイド・ストーリ』は、12名の圧倒的なフォルティッシモから繊細なピアニッシモまで、アンサンブルの醍醐味を聴かせます。また、ラヴェル:『亡き王女のためのパヴァーヌ』でのベッケのソロは天国的な美しさで、トロンボーンという楽器の枠を越えた音楽家ベッケのすばらしさに息を飲むばかりです。
トロンボーン界ではアレッシ、リンドベルイ、スローカーなどスター・プレーヤーがひしめいていますが、「ミシェル・ベッケほど音色に透明感があり、完璧なテクニックで、音に幅を持つトロンボーン奏者は他にはいない」とまで評されるその妙技が示された当アルバム、ブラス音楽好きにはたまらない1枚といえるでしょう。
・ニロヴィッツ:『バルカン』組曲
・ラヴェル/デスタンク編:亡き王女のためのパヴァーヌ
・ドビュッシー/デスタンク編:亜麻色の髪の乙女
・ドルリュー:マドリガル
・バーンスタイン:ウエスト・サイド・ストーリー
・コロンビエ/カンス編:エマニュエル
ミシェル・ベッケ (tb)
オクトボーン・トロンボーン・アンサンブル
録音:2005年8月8-10日 リヨン歌劇場ベルトロ・ホールにて収録
【オクトボーン・トロンボーン・アンサンブル】
オクトボーン・トロンボーン・アンサンブルはリヨン国立高等音楽院の卒業生を中心に2004年9月に結成された。現在ミシェル・ベッケが音楽監督を務める。キモイツ・トロンボーン四重奏団(フォール・ヴィナティエ・サンシェーズ・ブラン)の他3名のトロンボーン奏者、1名のテューバ奏者で構成されるアンサンブルである。また、今回のレコーディングでは2名のパーカッション奏者が加わっている。
ミシェル・ベッケ (ソロ・トロンボーン)
1971年パリ国立高等音楽院を首席で卒業。1974年ミュンヘン国際コンクール第3位。1977年トゥーロン国際コンクール第1位。1978年プラハ国際コンクール第2位。1979年ジュネーヴ国際コンクール第1位。1981年ミュンヘン国際コンクール第2位と多数のコンクールに優勝、入賞している。スイス・ロマンド管弦楽団ソリスト、パリ・オペラ座管弦楽団ソリストを経て現在リヨン国立高等音楽院教授、ローザンヌ高等音楽院教授。1974年に結成された
パリ・トロンボーン四重奏団のリーダーとして1997年まで同アンサンブルにおいて世界5大陸でツアーを行っている。
使用楽器:コルトワ 特注
アレクサンドル・フォール (トロンボーン)
1998年リヨン国立高等音楽院を最優秀の成績で卒業。キモイツ・トロンボーン四重奏団メンバー。スイス・ロマンド管弦楽団首席トロンボーン奏者。
使用楽器:コルトワ420coulisse lourdeモデル
セドリック・ヴィナティエ (トロンボーン)
1997年リヨン国立高等音楽院を卒業。キモイツ・トロンボーン四重奏団メンバー。パリ管弦楽団トロンボーン奏者。
使用楽器:コルトワ420ミシェル・ベッケ・モデル
クリストフ・サンシェーズ (トロンボーン)
1997年リヨン国立高等音楽院を最優秀の成績で卒業。キモイツ・トロンボーン四重奏団メンバー。パリ管弦楽団首席トロンボーン奏者。
使用楽器:コルトワ400Rハグマン
フレデリック・ブラン (トロンボーン)
1998年リヨン国立高等音楽院卒業。キモイツ・トロンボーン四重奏団メンバー。リヨン管弦楽団トロンボーン奏者。
使用楽器:コルトワ420ミシェル・ベッケ・モデル
アルノー・モンドゥシュ (トロンボーン)
1996年リヨン国立高等音楽院を最優秀の成績で卒業。バスク国立管弦楽団首席トロンボーン奏者。
使用楽器:コルトワ420ミシェル・ベッケ・モデル
マルク・メルラン (トロンボーン)
1995年リヨン国立高等音楽院を最優秀の成績で卒業。ロワール国立管弦楽団首席トロンボーン奏者。
使用楽器:コルトワ420 ミシェル・ベッケ・モデル
ローラン・フークレ (バス・トロンボーン)
1995年パリ国立高等音楽院を最優秀の成績で卒業。クロード・シュヴァリエ氏に師事。リヨン歌劇場管弦楽団バス・トロンボーン奏者。
使用楽器:コルトワ500 プレステージ・オーケストラ・モデル
ステファン・ラベリ (テューバ)
1995年リヨン国立高等音楽院を最優秀の成績で卒業。シドニー賞・マルクノイキルヘン賞・リバデル・ガルダ賞の各賞を受賞。トゥールーズ市立管弦楽団を経て現在パリ管弦楽団首席テューバ奏者。ローザンヌ高等音楽院教授。
使用楽器:ヤマハ YFB621
柔らかな音色と滑らかな音の動き、整ったイントネーションなど実に巧み。リズムが楽しいニロヴィッツやアレンジのユニークなバーンスタイン(「トゥナイト」でのスライドの遊びはちょっと驚くかも)などにはこのアンサンブルの表現力の豊かさを一際認識させられる。(ま)(CDジャーナル データベースより)