Room With A View -風景のある部屋

【INFINITE CIRCLE】
村井秀清/Piano，Keyboard　野々田万照/Sax　岡田治郎/Bass　鶴谷智生/Drums
　
　以上のメンバーでグループ活動を再活性化させた「インフィニット・サークル」の待望の作品。上記メンバーのほかに、いままでも様々な形でライヴ等で演奏してきた養父貴(g)海沼正利(perc)が加わり、音の厚みは増している。本作はいままでのギター中心のメロディラインから、野々田のサックスを前面に押し出したサウンドつくりとなっている。
　冒頭の�@は“雲立ち上り、水佇み，，，”という、「奥の細道的な」感性を表現したロマンティックなメロディが印象的な演奏。万照さんの風貌からは想像できない（失礼）ような清涼な音色は一度聴いたら忘れられない。
　�Aは煙草のＣＭを思い出す作品。村井のピアノはメロディを大切に繊細な響きをつけ加え、野々田のサックスに繋ぐ。むしろ心象風景をこの曲に託したといった演奏。
　�B：1999年１月１７日神戸大震災の日に出来た曲。“これから頑張ろう”という意味。曲調も淡々と水平線に向って進む船の舳先を感じるような清々しい印象の作品。ここでは現代最高のベースに成長した岡田治郎のベース・ソロを挟んで、切れのリズムをバックにした野々田のソプラノが響く。誰にもない音色を身に付けた自信がみなぎる演奏だ。
　�Cはなんとなくすんなり出来た、と村井が語る作品。１９９４年に結成以来、リーダーと編曲を努めてきた村井の人柄を表わすようなユーモアと真剣さを併せ持った優雅なメロディラインは、日本人には判り易い切なさを内包している。後半のテンポになってからの心地良い演奏はｋのアルバムの白眉を飾る演奏だ。
　�Dは友人が付けてくれたというタイトル。パーカッションのイントロから深海の中を泳いでいく魚の姿を感じさせるような演奏が始まる。野々田のメロディラインと、ダイニメロディ的な村井のソロが不思議な空間をつくり出していく。
　�Eはジョディ・フォスターの映画のタイトルから取られた。この作品もユニゾンでメロディを奏で、岡田の包容力に溢れたベースがバックを固め、今回辛酸かメンバーの鶴谷の切れのいいプレイがサウンドを引き締めるという今もグループが成し遂げた成果を再び示してくれる。
　�F：１２月１９日に出きたから19という、判り易い説明の命名。中間部の激しい野々田の演奏はこのグループのまとまりを表わすハイテンションのピークを示す。原曲の持つイメージを大切に、起承転結に富んだ演奏は、組曲のようなつくりだ。　　�G：翡翠の色彩を表わした作品名。言われてみればそんな印象を感じさせる澄んだ美しいメロディだ。ここでも村井の作品にさらにロマンティックな響きを付け加えた野々田が光る。メロディラインが輝く。
　�H：米語のチクタク。せわしい感じのイメージをつけた。短いパッセージを繋げテクニックの限界に挑戦する第一メロディと続くロマンティック・メロディが対比をなして、リズム感を作り出していく構成。岡田のテクニックを印象付けるソロと続くニューフォービートでスイングする鶴谷のドラミングが印象的だ。村井はジャズ的な手法でソロをとる。　�I：バンドのファンがメールでつけてくれた名前。まさにドーンそのもの音色、メロディの作品。岡田がメロディを奏で、一層その印象が強まる。マイナーメロディにおける村井の決まり手が、次々と襲ってくる。

　ハイセンスなサウンドと心を捉えるメロディが魅力のグル−プ、インフィニット・サークル待望の作品となった。
　彼らの音楽が部屋に「風景」を付け加えてくれるかもしれない。